今回はファイナンシャルプランニング・生涯設計の観点で非常に重要な「資産寿命」についてです。
「資産寿命」という言葉自体を聞いたことがない方も多いと思いますが、資産寿命の観点を意識してライフプランニングを設計することは非常に大事です。
この点を理解することで、ボヤっとしている将来の経済的・精神的な不安へが大きく軽減されると思いますので、是非の皆様の生涯設計に役立てて頂ければと思います。
寿命と健康寿命
まず、「寿命」という言葉に触れられればと思いますが、これはつまるところ”何年生きるのか”です。
生命寿命とも言います。
私自身も小さい頃は、おじいちゃんおばあちゃんに「長生きしてね!!」というようなことを言っていましたが、これは生命寿命の話です。
昨今、生命寿命と合わせて重要視されているのが「健康寿命」です。
健康寿命は、”心身共に健康で自立的に行動できる期間”を指します。
いかに生命寿命に対して健康寿命の割合が多いか、、、ということは近年の社会的な課題となっています。
若いうちから健康に気を使うなど、健康寿命を延ばすための一定の努力は必要不可欠です。
資産寿命とは
生命寿命や健康寿命とはまた別に、資産寿命とは”資金が尽きるまでの期間”を指します。
支出力が収入力を超える限り、所有資産のサイズは小さくなり続けていくことになりますが、一般的にこの事象は定年後・退職後に始まります。
所有資産額が減り続けることは生涯設計で一つの不安要素になりますが、”資産寿命は延ばすことができる”という前提に立つことで不安を大きく軽減させることができます。
資産寿命における誤解
ファイナンシャルプランニングに関する教育がされない、生涯設計をするきっかけすらない、などは日本特有の問題だと思いますが、多くの方が資産寿命に関して誤解を持っています。
それは、
- 現役の間は、お金を増やす&資産形成・運用をするという“増の期間”であり
- リタイア後は、お金を使い続ける“減の期間”と
分断して考えているところにあります。
理解しやすいように数字を当てはめてみます。
例)60歳まで会社に勤務して(年金の話とは分けて考えますが)、貯蓄や積み立て運用などで30,000,000円の資産形成をした場合
仮に生命寿命を90歳と設定して計算すると、60歳からの30年間(360ヵ月)で月々いくら使えるかな?のように計算されます。
その場合、月々ベースで考えると83,000円程使える、、、という計算結果となります。
よりコンサバな判断で、60歳でリタイアするのは早すぎる、、、や、月83,000円の出費は生命寿命を90歳と設定している場合だから、念のためもっと厳しい想定をする必要がある、、、など、考え始めたらキリがありません。
この考え方はリタイアまではお金を稼ごう、貯めよう、増やそう、という意識があるのに、リタイア後は使う(減る)だけという考え方に起因します。
将来の想定を早い段階からすることは重要ですし、必要に応じて自身の資産形成プランや出費の見直しをすることは大事ですが、多くの場合”資産寿命を延ばす”という観点に欠けています。
資産寿命を延ばす
資産寿命を延ばすということは、前述の例をとれば
- 83,000円/月を使える期間を30年間から35年間に延ばす
- もしくは30年間に渡って月々使える83,000円を100,000円使えるようにする
という考え方です。
これをどうやって達成するのか?それは“減”に偏った期間を作らないということです。
守って、増やして、使う
ライフプランニングにおいて重要なのは、リタイア後=使うだけの期間としないことです。
リタイア後は減るだけの期間と設定すると一方的に資産が縮小していくことになりますが、リスクを抑えた運用を平行して行っている場合はどうなるでしょうか?
前述の例は資産30,000,000円が0%の成長率で管理されていることを前提としています。
資産運用の鉄板ルールに年を重ねるほどに価格リスクを削らなければならないという注意点があるので、リスクを抑えた運用されている状態を保ちつつ(例えば1%や2%の運用をしつつ)お金を使っていくシナリオではどうなるでしょうか?
・例①:1%で運用する
30,000,000円が1%で運用される状態を保つとどうなるでしょうか?
設定する資産寿命を30年間とすると、先例では月々83,000円使うことができましたが、1%で運用される状態を保つと、月々96,000円使うことができます。
・例②:2%で運用する
30,000,000円が2%で運用される状態を保つ場合です。
同様に資産寿命を30年間とすると、111,000円を月々使うことができます。
・例③:1%で運用しつつ、83,000円を使う
30,000,000円を1%で運用しつつ、月々使用する金額を増やさずに83,000円と保つ場合です。
成長率が0%の場合だと資産寿命は30年間ですが、たった1%の成長率の差で資産寿命が35年まで延び、同様の金額を5年も延長して使い続けることができます。
自分のライフプランに合った手段を
今回の計算はあくまで一つの考え方です。
そして、リタイア後であるならば運用リスクにさらに注意する。
理解できないものは持たない、、などの注意が必要です。
3,000,000円資産があるなら、しばらくは触らないであろう資金の3分の1に絞って中期一括運用する、や、
資金を使うと同時に5-10年間の積み立て運用をする、
常にインカムが発生する”何か”を作るなど、個々で違うと思います。
年齢に関わらず出来ることがあるという観点は非常に重要で、これを理解することで未来に対し過度に不安を感じることもなくなるのではないでしょうか。
定年後の資産運用の注意点
資産寿命を重要視した結果、60-70歳になってから初めて資産運用を行う方々がいます。
非常に気を付けなければいけないケースです。
このような方々が初めて資産運用を行う場合、自身のリスク許容度に全く合っていないものを選んでしまう(選ばされる)場合があります。
リスクについて考える場合、ターゲットとする上げ幅が大きければ大きいほど下げ得る幅も概ね比例します。
重ね重ねになりますが、年齢を重ねる程に価格の変動リスクは抑えられなければならないので、この点を特に気を付けつつ、自分の人生設計に合った手段を探して頂ければと思います。’
また”元本保証”という言葉に流され結局ポンジースキームに加担している。
結果全てを失う、、、のようなケースも決してすくなくないので要注意です。