2,000万円と聞くと、年金老後2,000万円問題を連想する人が多いご時世かと思いますが、では、800万円と聞いて何を思いつくでしょうか?
知ってる人は知っているかと思いますが、所得には一種の”飽和点”があり、年収が800万円に達すると幸福度は上がらない。。。という研究です。
この考え方は元々はアメリカの行動経済学者・心理学者であるダニエル・カーネマンが提唱したものです。
彼の調査により(本来USドルベースですが)、800万円以上の所得があったとしても、それ以上の領域では、所得の上昇=幸福度の上昇とはならないことが主張されました。
同様にアメリカの経済学者リチャード・イースタリンも、一定の所得水準を超えると所得と幸福度の関係性は無くなるという主張をしています。
年収800万円の人の方が年収5,000万円よりも幸せな人生を送っている、、、ということはザラにあるということです。
このような収入と幸福度の相関関係については知っている人も少なくないと思いますが、実はより大事なのは稼いでる額よりも持っている額という研究も存在します。
お金のことを考えている人の多くが、豊かな人生を送りたいと思っているかと思いますが、その中で”お金と自身の心理の関係”を理解しておくことはライフプランニングの上でとても重要です。
貯蓄するにしても運用するにしても根幹となる考え方になりますので、この機会にこれからお話するお金と心理のバランスについて再考してみてください。
限界効用逓減の法則による年収800万円
お金と幸福度の比例関係になぜ限界があるのか?
という問いに一番私が個人的に納得している考え方が限界効用逓減の法則です。
何それ、、、そもそも読めないし。
という声が聞こえそうですが限界効用逓減(ゲンカイコウヨウテイゲン)の法則は、皆さんが実生活で普段から感じているものです。
極端な例ですが、めちゃめちゃ喉が渇いている時に飲む水と、その後コップ3杯の水を飲んだ後に飲む4杯目の水はどちらが美味しいでしょうか?
水を4杯を飲めるかどうかがまずわかりませんが、0→1、1→2、2→3と水を飲むにつれて満足度が落ちていきます。
この現象が収入に関しても発生します。
300万円よりも400万円、400万円よりも500万円と、800万円までは比例して幸福度は上昇していきます。
もちろんこの限界効用の他にも仰々しい理論や背景理由が多々あるかとが思いますが、世界の研究者が引いたラインが800万円で、それ以上は幸福度が落ちることもありえます。
なので年収を上げることを目指すならばまず800万円を目指そうということが言われるようになりました。
ここで疑問として出るのは、収入というのはある種”お金流れ”であり貯まっているものではありません。
実際800万円の年収があったとしても貯蓄はゼロに近い人もいますし、反対に年収は800万円には届かないけども一定の資産を持っているという人もいます。
ここから本題で、意外と認識されていない”持っている額と幸福度の関係”について説明していきます。
稼いでいる額よりも持っている額
まずダニエル・カーネマンの提唱した内容に関連してアメリカのアリー銀行による調査がありました。
25歳以上の一般人(1025人)に対してアンケートを通して年収を聞き、自身の幸福度に関して幸せ・とても幸せと回答する割合を算出しました。
以下、元々はドルベースの調査なので円転して表記します。
- 年収300~550万円 >25%
- 年収550~800万円 >40%
- 年収800~1,100万円 >43%
- 年収1,600万円以上 >45%
となり、年収800万円前後から上昇率が低くなります。
同時に”現在持っている額”についても調査が行われました。
アンケートで持っている額を確認し、幸せ・とても幸せと回答する割合を算出しました。
その結果によると、
- 資産0 > 29%
- 資産0~200万円 > 34%
- 資産200~1,000万円 > 42%
- 資産1,000万円以上 > 57%
と、明確に預金額・資産額に比例して幸福度が上がる結果となりました。
これらの調査により言えることは、
- 収入の飽和点は比較的すぐやってくる
- 持っている額と幸福度は高い相関関係がある
- 幸福度を上げたいのであれば収入を上げることよりも、持っている額を上げることを目標とするほうが早いし
- 収入が相対的に低い人でも持っている額を上げることにより、幸福度の高い人生を送ることができる
と言えます。
持っている額に限界効用はあるか?
フローとしての年収に関しては800万が限界効用ということがわかりましたが、持っている額については限界効用があるのでしょうか?
これについては面白い調査がハーバードビジネススクールによって行われており、資産額1億5,000万円の人と15億円の人の幸福度はほとんど変わらないという研究結果となりました。
一般的なレベルであれば持っている額で幸福度はどんどん上がっていきますが、やはり限界ラインが存在するということです。
水を10杯飲んでも50杯飲んでも、もう何が何だか分からない・・・みたいな感じでしょうか。
最後はやっぱり非地位財
私達が持つ財には地位財と非地位財が存在します。
地位財とは、お金や地位など相対的なもので、どうしても他者と比べてしまうもの・比べ安いものになります。
反対に、非地位財とは家族や大事な人との関係性、絆や愛などで、比較し難いもので、且つ持続性を伴うものです。
ファイナンシャルアドバイザーである私が言うのもなんですが、結局この非地位財がなければ収入や資産額を強化したところで幸福な人生は送れないと考えています。
実際にお金はあるはずなのに、やけに心配そうな人に出会ったりもしますし、反対に所得が限られていても豊かに暮らしている人もいます。
幸福度を上げるために持っている額を積み重ねていく中で、お金に翻弄されることなく、お金はお金以上にはならないということを踏まえて、地位財と非地位財、どちら点でも豊かな人生を送っていきたいものです。