2022年3月に入り、2021年度のマレーシア年金、EPF(Employees Provident Fund)の配当率が発表されました。
新型コロナウイルスによる経済的打撃にも関わらず配当率が良かったこともあり非常に注目を集めました。
マレーシアでEPFを行っている日本人はそれほど多くないと認識していますが、私自身は諸々の事情もあり、自分で行っている資産運用とは別にEPFを行っています。
2021年度のEPF配当率は6.10%と発表され、自身の個人EPF残高にその数字を当てて計算したところ、EPFのアプリで算出されている数字と合わないという事象が発生しました。
「あれ、これ間違いじゃないの・・・。」と思って色々調べてみて、今更ながらEPFの配当率がどのように個人EPF残高に反映されているのか知りました。
少しマニアックなトピックではありますが、EPFを行っている人にとっては知っていておいて損は無いと思いますのでご参考頂ければと思います。
積立式の年金inマレーシア
世界には概ね2種の年金システムがあります。
日本で行われているような”賦課式”の年金(世代を超えて支え合うシステム)とマレーシアで行われているような”積立式”の年金(自分の年金を自分で積み立てるシステム)です。
マレーシアが採用している積立式の年金構造の良いところは、
- ライフスタイルの状況に応じて一部資金の引き出しができる
- 明確に今自分の”自己年金ファンド”としていくらあるのか把握できる
- 将来的にもある程度大きな資金を形成できた際(例えば1億円前後のリンギット)には、法律で最低配当率は2.50%と定められているので、”ある種元本保証形式”で永続的に200-300万円程度の配当を毎年受け取り生活を続けることができる。
反対に積立式の年金構造の課題・問題として、
- 世代間構造ではないため全て自己責任で将来の準備を行う必要がある
- 十分に貯められていない国民が多いことが社会問題となってきている
- 外国人の立場としてはある程度の”ロック要素”が生まれる
*(注)EPFのロック要素について:通常EPFの資金に年金として手を付けられるのは50-60歳の年齢、もしくはマレーシアから完全撤退時、もしくは100万リンギットを超えた部分に関して、EPFの資金に手を付けることができます。
*(注)EPFの企業負担について:マレーシア国民の場合には、個人が行う月々のEPFの積み立てに対し(給与の11%の額)、企業側も負担し積み立て額を追加してくれるのが通例ですが(給与の12-13%相当の額)、外国人の立場で企業負担をしてくれているというケースはかなり稀です。
2020年3月からマレーシア全土で始まった活動制限令に伴い、多くのマレーシア国民が経済活動を行うことができなくなりました。
一つの経済政策として、特例でEPFの自身の個人ファンドを今の生活に充てて良いという許可がでましたが、多額の”年金用資金”が流出してしまったため、国民の将来資金が大きな懸念事項となっています。
EPF配当率の計算方法
前述にもある通り、調べる前までは12月末のEPFの残高に対し、配当率を掛けるというのが計算方法だと思っていました。
例えば12月末の段階で1,000,000リンギットが残高にある場合、2021年から2022年に移るタイミングで61,000リンギット(配当率6.10%)が配当として加えられると思っていました。
この単純計算は全くの間違いで正しい計算方法は以下の形となります。
通常前年のEPF配当率は2,3月辺りに発表されます。
2021年のEPF配当率は2022年の3月に6.10%と発表されましたが、この数字を振り返って2021年の毎月の残高に反映させます。
仮に月々5,000リンギットがEPFに回っている人がいて、その人の2021年1月終了時点で1,000,000リンギットの残高だった場合、2021年1月の配当は1,000,000リンギット×6.10%(=61,000リンギット)となります。
2月の配当は1,005,000リンギット×6.10%(=61,305リンギット)、3月の配当は1,010,000リンギット×6.10%(=61,610リンギット)、4月の配当は1,015,000リンギット×6.10%(=61,915リンギット)・・・と、この計算を12月まで行い、12か月分の結果を足し合わせるという計算方法になります。
議論されているEPF年金の懸念事項
私自身も行っていますが、当然ながらEPFはマレーシアリンギット建ての資産であり、外国人の立場として大きな割合の資産形成・将来準備を後進国通貨で行うというのは不自然だと思いますし、あくまで全体ポートフォリオの一部と捉えるべきだと考えています。
また、新型コロナウイルスの経済影響・行動規制により、多額の資金が引き出され、その結果、XXXXX以上の運用額を管理している人の配当率を下げて、運用額の少ない人の配当率を上げようという議論も行われています。
また、現在の最低配当レート2.50%もあくまで現段階ではという認識は必要だと思います。
後進国通貨も生活通貨という観点で常に一定量持っている必要はあると思いますが、中長期の資産形成においては、やはり国際基軸通貨を中心に考えるべきという観点は忘れてはならないと思います。