資産運用と聞くと、今持っている大きな資産を運用する富裕層だけが行うものと考える人がまだいるようですが、決してそんなことはありません。
積み立て運用によって早い段階から将来の準備をしていくことも資産運用と言え、時間をかけた資産形成・資産運用は基本的には誰でも行うことができます。
将来の準備は一定量自己責任で、、、という認識が日本だけでなく世界中で広まりつつある中、年金問題にしろ、子供の教育費の為の準備にしろ、”将来資金の準備”は積み立て運用で十分対策ができると私は考えています。
また、リスクを抑えつつ資産形成していくためには、積み立て型の運用でしか将来の準備はできないとも考えています。
今回の記事では、そんな資産運用・資産形成の鉄板の手法とも言える、積み立て運用の優れているポイントについて解説していきます。
何かしたほうが良いけど何をしたらいいか分からない、、、と思っている方々に参考にして頂ければと思いますし、今何かを検討している方々にも、判断のベースとしてご参考頂ければ幸いです。
積み立て運用による資産形成と将来の準備
優秀ポイント1:資産運用しながら流動資金も貯められる
お金を運用するということは、それがNISAにしろ個人型確定拠出年金にしろ、大なり小なり一定の”ロック要素”&”非流動化”が発生し、お金が完全に自由な状態ではなくなります。
万が一のためにすぐ使えるお金は貯めておきたいし、動かせない資金が増えると困る、、、と思う人はいると思いますし、それは至って自然で重要な考え方だと思います。
ただし、万が一のことを考えることは重要だけども、では将来の準備はいつするんだ?という課題も発生しまするのではないでしょうか。
そのように考える方々にとって、生活状況に負荷を掛け過ぎない準備方法はやはり積み立て型の運用となります。
以下で2つのシナリオを比べてみます(資産形成の時間枠を合計15年で考えてみます)。
Aはある程度貯まってから考えようというケースで、Bはできる範囲で始めていこうというものです。
シナリオA
- 収入から生活費等を差し引いて残る金額が月々10万円あるとします。
- 10万円を10年間貯金し続け、1,200万円が貯まりました。
- 10年経過後、十分な預金が貯まったと思い、1,200万円のうちの500万円を資産運用に充てて、5年間の資産運用を開始しました(仮に運用利率5%)。
- その後も継続して5年間に渡り10万円ずつ貯金しました。
- その結果、15年経過後の全体資産額は、1,938万円(預貯金1,300万円と運用部分の638万円)になりました。
シナリオB
- 収入から生活費等を差し引いて残る金額が月々10万円あるとします。
- 月々5万円を貯金し、残りの5万円で積み立て運用(仮に運用利率5%)を始めました。
- その結果、15年経過後の全体資産額は、2,224万円(預貯金の900万円と運用部分の1,324万円)になりました。
シナリオAで起きていること
シナリオAでは、万が一のためにと流動資金を貯めることを優先したことにより、機会損失が起きている状態となります。
ある程度貯まってから、、、と考えている間に時間はどんどん過ぎるという事象は全ての人に発生します。
シナリオBの早い段階から積み立て運用を行ったケースを見ると、万が一の時に準備しておきたいお金は足りないものでしょうか?
積み立て型運用の優れたポイントは、貯蓄と運用を両方同時に行えることです。
つまり、将来の準備をしつつ、ライフプランニングで予想していなかった事象が起きていたとしても、ある程度資金的準備ができているという状態を保てるということになります。
シナリオBでは10万円を半分ずつに分配しましたが、既に一定量預貯金が別にあるという前提をとれば、預貯金と運用の配分を例えば4万円:6万円とすることで、2,308万円という推定値になります。
これはシナリオAから見ると15年間で400万円もの資産額の差となります。
今ある時間を早いうちから使うということは資産形成においては鉄板のルールです。
優秀ポイント2:仮に運用リターンが0%でも貯まる
お金が貯めれない人と貯められる人の本質的な違いは、以下のどちらの思考をしているかによります。
Ⓐ:収入-出費=貯金額
Ⓑ:収入-貯金額=出費
貯められている人はⒷ(先に貯める額を決められる人)の考え方ができている人か、もしくは徹底的に出費を管理できている人のどちらかです。
Ⓐ(何かしらに使って残った金額を貯めようとする人)の考え方で、且つ、出費をコントロールできない場合は、思ったほど貯まらない、、、という状態が永続することになります。
積み立て運用を行うと自動的にⒷの環境に置かれることになりますので、考えなくても資産形成が進む状態になります。
もちろん運用によりできる限り資産を増やすことは目指しますが、Ⓑの環境で積み立て運用をした結果、仮に運用成長率が0%だったとしても、Ⓐの環境よりも資産が形成されやすいのは間違いありません。
私のクライアントでも、積み立て運用を10年前後続けている方々は、「結構貯まるもんですね。」と言われる方もいますし、また、Ⓐよりの考え方の方だと思いますが「こんな額見たことない。」と言われる方もいます。
運用の結果もそれなりにもありますが、塵も積もれば・・・の継続力をやはり過小評価してはいけません。
優秀ポイント3:リスクを抑えての運用はドルコスト平均法が最強
こちらの記事でマニアックな解説をしているので、もし興味がある方は読んで頂ければと思いますが、端的に言えば、時間を分散して行う手法(つまり積み立て型運用)により、以下のようにリスクが抑制されます。
- 一括投資のように一度のタイミングにリスクが集約されない。
- そのため積み立て運用中に経済後退・危機が起きたとしても、より安価なものを継続購入できるので、運用効率を上げることができる。
- 時間を分散できるので、極端な”タイミングのハズレ”がない。
- 定期的・機械的に買い続けるので、感情に流された悪手を打たない。
リスクを抑えた運用をしたければ、やはり積み立て運用が方法論としては第一候補になります。
優秀ポイント4:自身のキャリアとのバランスを取れる
資産運用!!と張り切って、自分で個別株を売り買いしたり、FXをやってみたり、勉強する範囲が広がってくると、精神的にも生活の面でもバランスが悪くなりがちです。
以下の記事でも紹介していますが、
自分は自分のキャリアの事に集中して収入を伸ばしたり、自分の時間・人生を楽しんだ方が絶対に良いです
本当に全部自分でやって投資の事を考えることが好きな人は別かもしれませんが、自分が行っている運用内容が気になって仕事が手につかない、自分の時間を楽しんでるどころじゃない、、、のようなパターンに陥ってしまう人は決して少なくありません。
そのような人の多くが感情に流された判断ミスをしてしまいがちで、であればとっととリスクコントロールして継続できる手法を取り、自分のことに集中したほうが良いのではないでしょうか。
そのような観点で見れば、積み立て型運用はドルコスト平均法手法が用いられリスクが抑制されており、且つ、買い入れタイミングにおいては機械的に行っていくものなので、経済的にも精神的にもバランスがとりやすいのではないでしょうか。
優秀ポイント5:時間を最大限使える
ここまで読んでもらった人は既に分かり切った話になってしまうかもしれませんが、積み立て型運用はタイミングを気にしなくて良い、タイミングのミスが無い手法なので、いつでも開始できます。
例えば今現在1,000万円ある、5,000万円ある、1億円ある、そしてそれを一括で運用していきたい、という状況であれば話は変わりますが、積み立て運用は自分の都合に合わせて開始できる手法です。
市場が良い時には、なんか下がりそうな気がする、、、と感じたり、
市場が悪いと、もっと下がりそうな気がする、、、と感じたり
タイミング決めるのはとても難しいのですが、積み立て運用に関してはタイミングを分散して行うので、いつ買えばいいのかというタイミングの心配がありません。
開始後に下がったら下がったでより安いものを買い、定期的に買い入れ続けるだけなので、感情に流されたミスの無い手法と考えられます。
そのような観点から、いつでも開始できる積み立て運用は時間を最大限使うことのできる運用方法で、且つ、優秀ポイント1でも触れたように、預貯金も同時に行うことで、将来準備とライフプランの融通性を両取りすることができます。
運用においては時間のあるなしが非常に大きく影響するので、本来的には30代、遅くても40代から始めるべきではないでしょうか。
どこへ行っても継続できるかどうか
ここで問題となるのは、続けられる積み立て商品・プランを持っているかです。
日本でもそうですし、マレーシアもそうですが、自国の商品で積み立て運用を継続できるのは、自身が自国に住み続けているということが前提とされます。
なので、昨今のようにキャリアやライフスタイルが国際化する中においては、積み立て運用をしたければ、最初から国際立て付けの積み立て商品を持たなければなりません。
私自身のクライアントは、絶対数が多いため駐在員の方が最も多く、次にMM2Hや海外就職で移住されてきた方々で、積み立て運用という形式に絞れば、やはり年金目的か子供のための教育資金準備という動機がほとんどです。
皆様の共通課題は、今はマレーシアにいるし、今後もいたいけど、でも極論どうなるかわからない。という点です。
この点はファイナンシャルプランニングに置いては超重要課題で、生活が国際化・多様化する中でそれぞれのプランに対応できる商品・サポートを提供させて頂いています。
実際はどうやって運用するのか?
一つの例として以下が挙げられます。
超分散型ポートフォリオ(ファンドオブファンド・ファンドオブインデックス型)となり、数千のアセット(銘柄)を同時保有することと同義になります。
このような超分散型ポートフォリオを複数保有し、積み立て運用を行う形が最も行われている手法で、管理コストを加味すると目標とする運用利率は5-7%前後になります。
時間分散と内容分散
積み立て型の運用で時間分散投資を行い、リスクをコントロールすると同時に、運用内容そのものも徹底的に分散が行われるので、個人レベルではこれ以上リスクを抑制した資産形成方法は無いと考えています。
世の中にはアメリカに集中した運用が良いという論調もありますが、私の考え方の基本は世界分散投資です。
積み立て運用は時間をかけることが前提なので、たとえアメリカであっても一つの国にリスクを集約させすぎるべきではないと考えています。
私のお客様の中には、もうちょっとこういう国・分野の色を強くしたいというようなリクエストを頂く場合もありますし、各々のクライアント様のリスク許容度や興味・関心に応じた内容調整を行う場合もあります。
いずれにせよ大前提となるのは準備するための時間があるかで、資産形成において皆様が今持っている時間は最も重要な要素になります。
積み立て運用まとめ
20,30年前の日本とは変わり、将来の準備に関してはある程度自助でどうにかしなければならない事は明白で、それは国からも明確に発信されています。
では何をすればよいかと考えた際に、積み立て運用をできるだけ早いタイミングで開始するという事は第一に重要なことです。
特に海外在住の方、また、常に海外キャリアの可能性がある方は、そのライフプランに沿った融通性のある手法を取らなければなりません。
人生・キャリアに一定量の国際性がありそうな方々を中心にサポートさせていただいておりますので、海外在住者、海外駐在員、海外起業家の皆様は是非参考にして頂けると幸いです。