ファイナンシャルプランニング

なぜ資産運用中に売買タイミングを読もうとしてはいけないのか

こんにちは、マレーシア在住のファイナンシャルアドバイザーのかっしーです。

私は、マレーシアを中心に資産運用のコンサルタント・ファイナンシャルアドバイザーをしておりますが特に投資未経験の方と資産運用の話になったときに真っ先に出るのが特定銘柄・商品の話です。

あの銘柄が良いとか、あれはだめだとか皆さんの持論を聞くのはとても楽しいのですが、それとはまた別の見方として、資産運用全般をするときに頭に入れておかなければならないことがあります。

それが、”Don’t time the market.”という格言と”Time in the Market is more Important than Timing the Market”です。

資産運用・資産形成において、良いタイミングで売買しようとすることよりも、運用を継続する時間そのものが大事なんだという話です。

Don’t time the market.に焦点を当てると、市場タイミングを読もうとして売買をするべきではないという意味になりますが株式運用に限らず、他のアセットにも応用される概念です。

この格言の意図を少し深堀してみます。

かっしー
かっしー
資産運用について長期で構えることの重要性についてです。特に積み立てにより資産形成を行う方は、長期でどっしり構えて、売買に神経を使わずに、自身のキャリアなど、自分がやるべきことに集中してしまうべきと考えています。

市場タイミングを読もうと何が起きるのか?

今回は固定金利の運用を前提とした話ではありません。

株式やインデックスなど、価格が常に変動するものを使用して運用をする場合の話になります。

投資の神、ウォーレン・バフェットも原則、長期ホールドを前提に実績を上げてきましたが、全てのケースに置いてポートフォリオの内容をいじるな!という話ではありません。

個人投資家が陥りやすい状況の多くが内容の変更・頻繁な売買に起因しているという事実を踏まえDon’t time the marketを踏まえて資産運用における注意点をお話していきます。

頻繁な売買=投資ではない

多くの人が(特にあまり経験のない方は)何かと売買をしたがります。

”やっている感が好き”という理由もありますし、”自分で市況を見て正しい判断をする高揚感が得たい”という理由、また、”動かす=資産運用”と思ってしまいがちな面もあるかと思います。

売買を頻繁にしている投資家、タイミングを常に計っている投資家に起こりがちなのが、

高く買って安く売る

という現象です。

そんなことしない、と思うかもしれませんが、個人投資家で最も頻繁に起こる投資の失敗がこの売り買いのタイミングを計ろうとして損失を膨らませていくという状況になります。

この株、今調子良さそうだし買おうかなと個人投資家が思った時には、既に機関投資家は売る準備を進めています。

調子良さそうな株を買ったら、下がり始めたので売る、他の良さそうなものを見つけて買ったら、また下がり始める、という負のスパイラル現象は実に多いです。

売買のコスト

一般的に、売買はコストが発生します。

前提として、売買コストのために対価が支払われているとするとポートフォリオの変更・株の売買などの行為は売買コストそのものを加味して売買取引のプラス結果を目指さなければなりません。

前述の現象と同時に考えると、コストをかけて売買・内容調整をしたにも関わず、結果的にタイミングも見誤ってしまうというダブルパンチのケースは非常に多いと言えます。

一般的に高頻度で売買をする人と、まったく売買をしない人の運用結果を比較するとまったく売買をしない・内容を調整しない人のほうが圧倒的に運用が成功しやすいという結果も出ています。

そして3つ目が今回のメインテーマです。

数日で運命が変わる!

まずは、こちらをご覧ください。

この表があらわすものは、1995-2014年にかけてS&P500(アメリカの優良企業500社のインデックス)に投資した場合20年後にどうなったかという話です。

一番左の”Fully Invest”のケースの場合、つまりS&P500のインデックスで運用を継続していた場合、投資結果として、年間平均成長率は9.8%となり10,000USDの元本に対して最終評価額は65,500USDだったということです。

左から二つ目は”Missed 10 best days”、つまり、20年間の間に最も成長した10日を除くとどうなるかというもので、たった10日間を逃しただけで、投資結果として、年間平均成長率は6.1%となり、10,000USDの元本に対して最終評価額が32,600USDとなります。

たったの10日の差で、継続して運用し続けた場合とこんなにも差が出てしまいます。

もう一つ見てみましょう。

ちょうど真ん中のもの、”missed 30 best day”、つまり20年間で最も成長した30日を除いた結果となります。20年間のうちの1か月分の日数の差で、投資結果として、年間平均成長率は1.5%と留まり、10,000USDの元本に対して最終評価額は13,500USDとなります。

内容を変更・売買することにより最も投資しているべきタイミングを外してしまうという事象を非常にクリアに説明できる内容ではないでしょうか?

念のため他のインデックスも紹介しておきます。


こちらはFTSEのインデックスで、いわゆるイギリス平均株価です。(日経平均株価のように考えてください)

一つめのS&P500のケースと全く同様のことが起きています。

20年間の間に継続して投資されていた場合、年平均の運用結果は6.3%となり

最も運用結果が良かった10日間だけ投資できていないとすると年平均の運用結果は2.8%まで落ちてしまいます。

最終結果はS&P500と同じく雲泥の差となります。

Don’t time the market.

以上の理由から、市場タイミングを計ろうとして売買をすることは基本的にはネガティブな結果に結びつくことが多いとされています。

”売買”は売りのタイミングと買いのタイミングの2度の決定機会を指すので、その両方で正しいタイミングを取るということは非常に難易度が高い行為になります。

百発百中未来を予言できれば別ですがそれは普通の人間にはできないので、分散された運用内容・インデックスなどで長期投資することが最も良い結果になりやすいと考えられます。

さらにリスクを落としたければ一括の運用ではなく時間分散投資(積み立て方式)を使用することが推奨されます。(これについてはまた別の機会に触れます)

いざ、何か始めようとすると、短期的な視野でものごとをとらえてしまいがちな人も多いですが、それは投資ではなく投機です。

運用のための時間があるという前提であればその与えられた時間を十分につかった資産形成が最も経済的に、また精神的にも安定した方法なのではないでしょうか。

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